NTTドコモとソフトバンクのLTE
前回「800MHz、プラチナバンドってなに? (1) 特徴とメリット」では、低い周波数の電波の方が、より回り込みやすいので、800MHzをはじめとしたプラチナバンドはケータイやスマホの繋がりやすさには優位、という話をしました。
では、各社、高速通信のLTEではどのような周波数を使っているのでしょうか?
NTTドコモのLTE「Xi」(クロッシィ)は2GHzを使用してサービスを開始しましたが、現在では800MHz、1.5GHz、1.7GHzも追加して使用しています。
ソフトバンクは従来からの2GHzに、イーモバイルを買収して得た1.7GHzのダブルをLTEで使用しています。更に、今年4月以降は900MHzのプラチナバンドLTEを追加し、トリプルの体制を引くとしています。iPhoneはずっと900MHzに対応しているため、ソフトバンクは900MHzのLTE基地局を設置することで、iPhone 5S/5Cに限らずiPhone5等でも繋がりやすさが向上すると見られています。
auは800MHzとiPhone5で失態の過去
一方のauは、前回のホームページ画像で紹介したように 800MHz のプラチナバンドを重点的にLTEサービスを展開しています。
ところが昨年、iPhone5はこの800MHzのLTEサービスが使えないにもかかわらず、使えるかのようなピーアールをするという、大チョンボをしでかしてしまいました(KDDIの言葉を信じるなら・・の表現ですが)。
iPhone5の対応エリア虚偽記載問題(誤記載問題)です。
auは高速通信のLTEも800MHzの基地局を中心に充実させていて、Android auでもそれがウリでした。2012年にLTEにラインアップ追加されたiPhone 5でもその勢いで繋がりやすさをアピールし、「4G LTE」サービスについて広告やホームページなどに「2013年3月末には実人口カバー率96%に拡大」「全国主要都市部をカバー」としていました。
しかし、iPhone 5はハードウェアが800MHzには対応していないため、iPhone5に限ってはこの数字は間違い(虚偽)であったのです。
KDDIに対して措置命令を出した消費者庁によればiPhone5がLTEで通信できる率実際はわずか14%だったことがわかりました(2013年3月末時点)。
auのiPhone5ユーザーにとっては深刻な問題です。せっかく高速通信ができると思ってiPhone5を導入したものの、高速通信エリアの告知に大きな間違いがあったのですから。ネット上でも多くの波紋を呼んだ出来事です。
ところが・・
2013年に発売された、iPhone 5S、5C ではハードウェアが 800MHz に対応しました。
これはauにとっては満面の笑みがこぼれるような朗報だったことでしょう。
拡充をしてきた800MHzのインフラがiPhoneでは役に立たないことで不評を呼んだ矢先に、iPhoneの新機種が800MHzに対応したのですから。iPhoneでも繋がりやすいインフラ環境を胸をはってアピールできるようになりました。
少なくとも、au版のiPhone5と比べると、800MHzに対応したiPhone5S/5Cは飛躍的にLTEの接続率が向上するのです。
なお、auのiPhone5S、5Cの高速通信LTEでは既に広範囲をカバーしている800MHzの基地局の電波を使いつつ、混雑すると自動的に2GHz等の他の周波数に切り替わる仕様になっています。
こうした背景もあるためか、auは消費者には一見意味がわからなくても「800MHz」を強調しているCMを行っているのかもしれませんね。
Text: 神崎洋治
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